第11回 ちびっ子広場
湯島
ちびっ子広場
イベントレポート
「体験を通じて湯島を好きになる」をテーマに、2016年8月21日に開催された第11回「湯島ちびっ子広場」。年々規模が大きくなり、今年は会場を湯島天満宮境内に移し、商店会青年部が中心となって内容の見直しを図りました。
どんな体験ができるのか? 晴天に恵まれ、賑わいを見せる湯島天満宮境内を訪ねてきました。
子どもたちでにぎわう地元企業による体験コーナー
湯島周辺にはたくさんの企業があります。企業に協力を仰ぎ実現したさまざまな体験コーナーが、本殿に続く参道にずらりと並びました。
《AEDの使い方講習》――フクダ電子東京販売株式会社
突然の心停止から命を救うAED。人が倒れてから救急車が来るまでを想定し、AEDを使った救命処置を学び、人の模型で心肺蘇生を体験。小学生の子からは「数えながら何回も押す(胸骨圧迫)のがとても大変だったけど、命を助けられるので、使い方を覚えようとがんばった」と頼もしい感想。「実際に使っているのを見たかったので、ありがたいです」といった大人の声も。長時間を要する講習形式にも関わらず、たくさんの親子が参加していました。
《盲導犬体験》――公益財団法人アイメイト協会 株式会社SEED支援
目隠しで盲導犬との歩行体験には長蛇の列ができました。盲導犬の仕事中は、撫でたり声をかけたりしてはいけないとスタッフから教えられ、「目が見えない人のための盲導犬。気をつけようと思った」と、小学生の子。目隠しの体験に緊張気味でしたが、歩く時と止まる時のタイミングが、ハーネスを持った手にはっきりと伝わってきて、「安心して歩けた」と笑顔で話してくれました。
《視覚障害を体験するゲーム》――株式会社SEED
ここは、黒い箱の中に手を入れ、中の物を触感で認識するゲームで「見えない」ことを体験します。シャンプーとリンスのボトル、牛乳パックと他の飲料パック、それぞれ区別のためにどちらかにギザギザが付いていたり、切り込みがあったりすることを発見。
「見えないと違いがわかりにくいことがわかった」「すごい、こんな工夫があるなんて知らなかった」と感心する子どもたち。輪ゴムを付けるだけでも区別ができるようになると聞き、自分にもできることがないかと考えを深めていました。
《理科実験体験》――大洋製薬株式会社
理科実験で発砲入浴剤・バルーンスライム・弾むシャボン玉のいずれかを作成できるとあって、参加者が300名を超える人気ぶり。
実験毎に違う材料を用い、家庭でも楽しんでもらえるよう全て市販品を使用。実験に熱中する子どもの母親は、地元企業が共催していることに、「湯島周辺にはいろんな会社があるのですね。こういった機会があるのはとてもありがたいです」と話していました。
《防災ワークショップ》――はじまりの学校 a.school
「もしも首都直下型地震が発生したら、どんなことが起きる?!」を考えるワークショップ。地震発生時を具体的にイメージし、「備えたい」と積極的に思うようになることを目的としています。参加者は、ゲーム形式で楽しみながら、それぞれ思い付いたことをどんどん出し合っていました。幼児から年配の方まで、家族での参加も多く、「想定することで、何を備えなければいけないかがわかった」「家族で一緒に考えることが大事」「子どもと意見を出し合う体験ができて楽しかった」など、30分間のワークショップでさまざまな気付きがあったようです。
《非常用給水袋体験》――東京都水道歴史館
災害時、断水し給水車に頼らなければならなくなったら、どうやって水を運びますか? リュックサック型の給水袋に2リットルの水を入れて背負い、同量の水が入ったペットボトルやポリタンクと重量感を比較。背負うことでとても軽く、両手も空くという利点もあることを体感しました。
体験後に給水袋をプレゼントされた親子は、「備えておくのにコンパクトで良い」「存在は知っていたが、使い方を教えてもらえ良かった」と喜んでいました。グループで来ていた小学生は、「使い方を知らない人にも教えてあげられるね」と得意げでした。
《きみはマッチで火をつけられるか!?》――ボーイスカウト文京第6団
今年は、マッチを使ってロウソクに火を灯す体験を実施。この頃は、マッチを使うことが少なく、見るのさえ初めての子どももいました。便利な道具ができても、緊急・災害時に使う可能性があるマッチ。
「机上での知識だけでなく、体を使って実感してもらうのが私たちのやり方です」と語るのは団委員長の長谷川裕二さん。
子どもたちは慣れない手つきで懸命に挑戦! 火の怖さを知らず、「熱い!」と言いながらマッチを離すことができない子どももいました。
「熱かった」「怖かった」「面白かった」と、興奮気味に話す小学生が多かったのが印象的でした。
その他にも、《白梅太鼓による太鼓体験》《湯島天満宮による白衣・袴で参拝&記念撮影》《消防署によるはしご車試乗とゴーカート》《警察署による乗馬・白バイ体験》などが実施。 子どもたちに楽しんでもらうだけでなく、町を構成する大人や仕事を意識できるように、多くの方と企業が協力してくれました。
通貨“シラウメ”も好評!
子どもたちが熱心に体験コーナーを巡る仕掛けにもなったのが、ちびっ子広場独自の通貨“シラウメ”です。
1つ体験(一部除く)をすると100シラウメがもらえ、その“シラウメ”でゲームや商店会が開く飲食コーナーで、買物ができます。真剣な眼差しで体験をし、“シラウメ”をもらって思わずにっこり。それを握って次のコーナーに急ぐ子どもたちの姿が、あちこちにありました。
「遊び感覚で体験し、がんばってもらった“シラウメ”で買物ができる循環がとても良い」と話すのは、毎年来ている6歳の子どもの母親。
また、ポスターを見て初めて来た小学生の母親は、「子どもが積極的に各コーナーを回るのは、他では見られない姿。これからも続けて欲しい」と好評でした。
多世代の交流を生む「昔あそび」
文京区内の各小学校に指導に行くベーゴマの名人、今村逸朗さんによる恒例のベーゴマコーナーはいつも人気です。鉄製のベーゴマの重さに驚く子どもたちは、紐の巻き方のコツを教わりますが思っていたより難しく何度も挑戦。
「タイミングを考えて、押して離して引いてを早くやらないといけないの」と、子どもたちは格闘。横では、名人が放つベーゴマが、台の上で勢いよく回ります。その早業に感心し、子どもたちがまた集まる――「遊び」が輪を広げ、自然と交流が生まれていました。
こうした子どもたちの遊びの場を町の中につくる活動をするのは、「NPO法人コドモ・ワカモノまちing」。 トラック(移動式子ども基地)にさまざまな遊具を載せて遊び場を出前。公園やイベント会場、人々が行き交う道路にも場をつくり、子どもたちと住人の交流を生んでいます。丸太や段ボールなどの自然素材を用意し、その場で子どもたちが遊びを創造できるようにもしています。 この日は学生ボランティアが、巨大コリントキット(ビー玉ころがし)を組み立てました。ちびっ子広場ではスペースに限りがありましたが、今後湯島の路地にも展開する予定。もっとダイナミックにオンリーワンの遊び場ができそうですね。
湯島で生まれ育った年配の男性は、「子どもの頃よく湯島天満宮境内で遊んでいた。子どもたちが楽しそうに遊ぶ姿を見ると昔が思い出され、うれしい」と話しくれました。
湯島がひとつになることを目指して
この日の締めは、久々に復活した「湯島音頭」で盆踊り。
子どもたちはもちろん、若い世代の親たちも見たことがありません。見よう見まねで踊り、最後はアンコールの声も上がるほど盛り上がりました。
白梅太鼓が鳴り響くやぐらを真ん中にできた大きな輪が、湯島に住む人々の心の輪のようでした。
今回のちびっ子広場は、「地域の防災力をあげる」という目的もありました。
体験や遊びを通じて自分たちの町、湯島を好きになりきずなが深まり、災害時に一致団結できる町を目指し、湯島白梅商店会青年部が企画運営をしました。
地元企業と大勢の近隣大学学生ボランティアの手伝いで、多くの世代の交流が生まれ、湯島の町が一つになっていくのを感じました。
(文・写真:Loco共感編集部 後藤菜穂)